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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)9756号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕原告<注、商品仲買人>が昭和四一年八月八日被告から東京穀物商品取引所の定める受託契約準則の規定に従う旨の合意の下に同取引所市場における売買取引の委託を受け、同日同市場前場三節における先物取引として、小豆五枚(一枚は四〇俵)を一俵当りの約定値段金一一、二〇〇円で売付けをしたことは当事者間に争いがなく、<証拠>によると、右取引は被告の指図注文によるものであることが認められる。≪中略≫

<証拠>によると、同月一五日前場三節の終了後、被告の前記売建玉について被告がかねて預託していた委託本証拠金二三〇、〇〇〇円の半額相当額を超える損計算となり被告は追証拠金二二五、〇〇〇円を預託すべき義務を生じたので、原告は同日前場三節終了後被告に対し前記金二二五、〇〇〇円から被告の有する余裕証拠金五、〇〇〇円を差引いた金二二〇、〇〇〇円の追加預託を請求したこと、ところが、被告は右預託をしようとしないので、原告は同日中に右追証拠金の預託がなければ明一六日前場一節で強制手仕舞する旨被告に通知したうえ、翌一六日前場一節において前記売建玉を一俵当りの約定値段金一三、一〇〇円で強制手仕舞処分をしたこと、その結果、前記取引につき被告は金三八〇、〇〇〇円の損金勘定となり、また右取引について東京穀物商品取引所の定める料率による委託手数料は売付け、買付け(手仕舞)につき各金八、〇〇〇円となること、以上の事実が認められ、≪中略≫右認定を左右する証拠はない。

しかし、<証拠>により真正に成立したものと認められる甲第七号証<注、東京穀物商品取引所の受託契約準則>によると、原告も自認するようにその第八条、第一三条において、追証拠金はその徴する事由の発生した日の翌営業日正午までに預託すれば足り、また商品仲買人は委託を受けた売買取引につき委託者が所定の日時までに証拠金を預託しなかつたときにおいて当該委託を受けた取引を委託者の計算において処分することができるものと定められているのであるから、原告が一六日前場一節においてした前記手仕舞処分は準則の規定に反し右手仕舞処分をもつて被告に対抗できないものというべきである。もつとも、証人松井勝彦の証言によると、被告は原告の追証拠金請求に対し売建玉自体を否認して右証拠金は入れられない旨言明し、当時相場の変動が激しかつたことが認められ<中略>原告は右事実をもつて原告が強制手仕舞処分ができるように主張するが右事実をもつて直ちに準則所定の翌営業日(一六日)正午以前において原告が手仕舞処分をする権限を生じたものとすべき理由はないから右主張は採用できない。

右のとおり原告がした前記手仕舞処分をもつて被告に対抗できないとすると、原告は本件取引による損金勘定をもつて被告の負担に帰せしめることはできないものというべきである。原告は、原告が一六日正午まで手仕舞をまち同日後場において手仕舞すべきものであつたとしても、同日午場一、二、三節の小豆一俵当りの約定値段は、いずれも金一三、〇〇〇円であつて同日前場一節の値段と変りがなく被告は原告の債務不履行により何らの損害を受けていないのであるから、被告は前記損金勘定の負担を免れない旨主張するが、原告の手仕舞処分が同日前場一節においてなされ、それが被告に対抗できないものである以上、その後の相場において約定値段に相違がないとしても、前記損金勘定を被告の負担に帰せしめる理由はないものというべきである。(篠原幾馬)

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